この記事は2026年10月公開の動画をもとにしています。数字・制度・料金は動画公開時点のものです。内容は、教科用図書検定調査審議会が2026年10月13日の会議で示した「教科書検定の改善について(第一次論点整理)(案)」にもとづくもので、決定・施行ではありません。動画の合計時間の上限は、今後見直すこともあり得るとされています。
- 2030年度から、二次元コードの先の動画や音声も教科書の一部として検定の対象に。案では動画は1本3分程度まで、1冊の合計にも教科・学年ごとの上限(20〜90分)
- 正確さは教科書会社・国の検定・使い始めてからの訂正の3つの関門で確かめる設計。AIを教科書に載せるかは結論持ち越し
- 講義動画・大量の反復練習・入試の過去問は「教科書ではなく教材の役割」と整理された。塾の教材は、正確さと使い方を塾自身が確かめる立場にある
- デジタル教科書の動画やAIの扱いが、これからどう決まるのかを押さえておきたい
- 映像教材やICT教材を使っていて、教材の選び方・見直し方を考えたい
- 「学校でも動画があるのに、塾では何が違うの?」と保護者に聞かれたときの説明を準備したい
何が変わる?二次元コードの先も「教科書」に
まず前提です。今の制度では、正式な教科書は紙だけです。紙の教科書に二次元コードが載っていて、その先に動画や音声がありますが、あれは教科書ではなく「教材」という扱いで、国の検定は受けていません。
これが、今年6月の法改正で変わりました。次の学習指導要領が始まる2030年度から、紙だけでなく、デジタルの部分も含めて教科書にできるようになります。つまり、動画や音声も教科書の一部として検定を受けることになります。
なぜ今、ルールづくりが必要なのか
資料では、今の二次元コードの先にある動画について、次のような問題が挙げられています。
- 教科書の内容と関係の薄い動画もある
- 1冊の教科書の二次元コードの先に、合計5時間を超える動画を載せている例もある
- 学校の現場から、「二次元コードの先を全部扱わないといけないのではないか」という負担感が指摘されている
デジタルには、紙のようなページ数の制限がありません。いくらでも載せられてしまうからこそ、教科書として何をどこまで載せるのかを先に決めておく必要がある、というわけです。
動画は1本3分程度、1冊の合計にも上限(案)
今回の案の中身は、大きく2つです。
案1:動画1本の長さは3分程度まで
1つ目は動画1本あたりの長さで、3分程度までが適当だとされました。理由として挙げられているのは、子どもの集中力と、先生の授業づくりを妨げないことです。
動画を再生している間、子どもは受け身で見ることになります。教科書の動画が長くなると、授業の時間がそれで埋まってしまいます。
案2:1冊あたりの動画の合計時間にも上限
2つ目は、教科書1冊あたりの動画の合計時間です。教科や学年ごとに、上限の分数が示されています。
図1教科書1冊あたりの動画の合計時間の上限(案)
| 国語・算数・数学・道徳 | 20分1冊あたり程度 |
|---|---|
| 社会(小学校) | 20分 |
| 地理・歴史・公民(中学校) | 40分 |
| 理科(小学校3・4年生) | 40分 |
| 理科(5年生以上) | 60分 |
| 外国語(小学校5年生〜中学校3年生) | 80分 |
| 音楽・図画工作・家庭・技術など (技能を身につけるのに動画が役立つ教科) | 多め中学校で3学年を1冊で使う場合は90分の枠も |
計算の例:算数(1冊20分)なら、3分の動画で1年間に約6本。本数の上限が決められたわけではありません。
ここで簡単に計算してみます。算数の教科書が1冊20分なら、3分の動画で1年間に6本ほどになります。先ほどの「合計5時間を超える例」と比べると、かなり絞り込む方向だと分かります。
ただし、この表は次の学習指導要領の検討に合わせて見直すこともあり得る、と書かれています。数字はまだ動く可能性があります。
正確さは誰が確かめる?3つの関門
ここからが本題です。教科書に動画やデジタルの仕組みが入ったとき、その正確さは誰が確かめるのか。資料を読むと、3つの関門で確かめる設計になっています。
関門1:教科書会社
教科書に載せられるのは、子どもが入力したり操作したりしたときに出てくる結果について、その正しさを教科書会社が確実に説明できるものに限るとされています。
また、外部のウェブサイトへのリンクや、教科書ではない教材への二次元コードは載せない方向です。外部のサイトは、教科書会社が直せないからです。子どもが使っている途中で中身が変わったり、消えたりするかもしれません。それでは、検定で確かめた意味がなくなってしまいます。
関門2:国の検定
動画や音声は、ファイルと一緒に、話している内容を文字に起こしたスクリプトの提出を求めています。審議会に、デジタルの内容を専門に確認する委員を加える案も出ています。
注目したいのは、動画に求める正確さの水準です。動画については、「学習のねらいに支障がなく、客観的に明白な誤りがないこと」とされました。文章と同じくらい細かく、映像や音の隅々まで厳密さを求めると、教科書会社も審査する側も負担が大きすぎて、動画を載せること自体を控えてしまう。だからこそ、ここは現実的な線を引いたということです。
関門3:使い始めてからの訂正
デジタルなら、配った後でも直せます。そこで、誤字や、事実として誤りになったものは、承認され次第すぐに直す。一方、統計の更新のような変更は、授業の途中で中身が変わると困るので、夏休みや冬休みなどの長い休みの間に反映する、という案です。
実は今の紙の教科書でも、検定の後に出される訂正は、令和7年度でおよそ4万か所あったとされています。だからこそ教科書会社には、検定の後も直し続ける体制を持つことが求められています。
AIを教科書に載せるかは、結論持ち越し
では、AIはどうなるのか。結論から言うと、AIを教科書に載せるかどうかは、まだ決まっていません。
AIは、子どもの入力に応じて、答えや提案をその場で作ります。先ほどの「出てくる結果の正しさを、教科書会社が確実に説明できるもの」という条件に、そのままでは当てはめにくいのです。資料では、当面、次の点を整理する必要があるとしています。
- そもそも教科書にAIが必要なのか
- どのようなAIが対象になるのか
- AIの性能や信頼性、出てくる答えの正確さをどう担保するのか
- 検定で、どのような基準・方法・体制で審査できるのか
この部分は、9月の骨子案からほとんど変わっていません。AIについては、まだ議論が始まったところと見ておくのがよさそうです。
図2教科書の正確さを確かめる3つの関門と、AIの位置づけ(案)
講義動画・反復練習・過去問は「教材」の役割
もう1つ、学習塾として押さえておきたいのが、教科書には載せられないとされたものです。
- 先生の代わりに単に説明する講義動画や、問題の解き方を解説する動画
- 理解を深める範囲を超えた、反復練習のための大量の練習問題
- 入学試験の過去問
- 授業で扱うことを想定していない、網羅的な資料やデータ
- 娯楽の要素が多いゲームや漫画
これらは、使ってはいけないという話ではありません。教科書ではなく、あくまで教材の役割だという整理です。
あわせて今回、次の学習指導要領に向けて、教科書の中身を精選する方向も示されました。教科書は授業で扱う中心の内容に絞り、理解を広げたり深めたりするのは教科書以外の教材で行う。教科書と教材の役割分担をはっきりさせていこう、という流れです。
塾の教材は、塾自身が正確さを確かめる
これは学習塾にとって何を意味するのでしょうか。反復練習や、つまずいたところに戻る解説、入試に向けた演習といった部分は、これからも教科書の外、つまり教材や学校外の学びが担う部分として残っていくと考えられます。
ただし、見落としたくないのは、塾で使う教材は国の検定を受けるものではないということです。教科書であれば、教科書会社と国の検定と訂正のルールが正確さを支えます。でも塾の教材については、その確認を塾自身が行うことになります。
教材を選ぶとき・見直すときに確かめたい3つのこと
目的:何のために、授業のどの場面で使うか
その動画や問題を、何のために、授業のどの場面で使うのか。教科書の検定案でも、活用の目的と方法が明確であることが条件になっています。塾の教材も、同じ見方で点検できます。
誤りへの対応:誰が、どのくらいの速さで直すか
誤りが見つかったときに、誰がどのくらいの速さで直してくれるのか。そして、直したことが講師や生徒に伝わる仕組みがあるのかを確かめます。
AIを使う場合:講師がどこで確認するか
AIが出した答えや提案を、講師がどこで確認するのか。生徒が使いっぱなしにならないよう、教室の運用として決めておく必要があります。
もう1つ、保護者への説明も考えておきたいところです。学校の教科書に動画が入ってくると、「学校でも動画があるのに、塾では何が違うの?」と聞かれることも出てくるかもしれません。そのときに、教科書が担う部分と、塾の教材・指導が担う部分を分けて説明できるようにしておくと安心です。
今後の流れ:来年の春ごろに最終報告
今回の資料によると、今後は次のように進む予定です。
- 10月〜11月:教科ごとの部会で検討
- 12月〜1月:総括部会で検討
- 来年の春ごろ:最終報告をまとめる
その後、文部科学省が検定のルールを改正します。教科書が変わる2030年度に向けて、まずは塾の中で、今使っている教材の目的、誤りがあったときの対応、AIを使う場合の確認の仕方を、一度見直しておきたいところです。
まとめ
- 2030年度から、動画や音声も教科書の一部として検定の対象に。案では動画は1本3分程度、1冊の合計にも教科・学年ごとの上限がある
- 正確さは、教科書会社・国の検定・使い始めてからの訂正という3つの関門で確かめる設計。AIを載せるかは結論持ち越し
- 講義動画・大量の反復練習・入試の過去問などは、教科書ではなく教材の役割と整理された
- 塾の教材は国の検定を受けない。目的・誤りへの対応・AIの確認を、塾自身が確かめておく
この内容を、自塾でどう進めるか相談したい方へ
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- 文部科学省「令和8年度教科用図書検定調査審議会総会(第2回)・総括部会(第3回)合同会議 配付資料」(2026年10月13日)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/tosho/016-5/siryo/1414759_00002.htm - 資料02「教科書検定の改善について(第一次論点整理)(案)」
https://www.mext.go.jp/content/20261013-mxt_kyokasyo02-000052161-02.pdf
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